AKANE
 クロウの胸には短剣が突き刺さっていた。揺すっても、一向にクロウは目を覚ます気配は無い。
(お、落ち着け、ユリウス・・・! とにかく、この剣をなんとかしないと・・・)
 ユリウスが血相を変えて短剣の柄に手を添えた時、
「う・・・」
 棺の中から呻き声が上がった。驚き振り返ると、ちょうど少女がむくりと起き上がるところだった。
「!!??」
 少女の胸の短剣はなくなっている。
 混乱してい目を丸くしているユリウスに、少女が言った。
「その剣・・・、抜かないで・・・」
 少女がなんとか声を絞り出すと、ユリウスは腕の中でぐったりとして動かないクロウと少女を交互に見た。
「へ・・・!? 一体どうなって・・・」
「・・・ぼ・・・く・・・だよ。クロウ。魔力のない・・・この子の身体じゃ、すぐにでも僕の意識は消えてなくなっちゃうだろうけど・・・」
 信じられない光景に、ユリウスが目を丸くして口をあんぐり開けている。
「君は確か、フェルデンの一番の部下だよね・・・? ちょっと伝言を頼まれてくれる?」
 少女の姿をしたクロウが言った言葉に、ユリウスは思わず無意識に頷いていた。
(は!? クロウ陛下が死んで、この子が生き返って・・・、この子がクロウ陛下で・・・?? 一体どうなってる~~~~~~~~~~~~~~~!?)
 ユリウスは嘗て無い程にパニックに陥り、心の中で思い切り叫び声を上げていた。


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