AKANE

4話 扉の向こうへ


 朱音は腕までを覆う滑らかな生地の手袋を、両手を広げまじまじと見つめていた。
「お綺麗でございます、アカネ様・・・」
 純白のドレスに身を包んだ少女は、平素とは違った特別なメイクが施され、ほんのりとその頬は桜色に染まっていた。真っ白のドレスに黒い髪が映え、神秘的な雰囲気を放っている。美しく着飾った少女は、少女というよりもいくらか大人びた女性のようにも見せていた。
 鏡越しに、まるで自分とは違う別人がそこに映っているかのように呆けている、少女の美しく纏め上げられた髪に、仕上げのティアラを据え置きながら、うっとりとした声で侍女であるエメが溢す。
「エメ、わたし、どうしよう、怖い・・・」
 不安げな声を上げる少女を慰めるように、エメは優しくその手を握った。
「大丈夫ですよ、アカネ様。国中の誰もがアカネ様を待ち望んでいます。それに、今ごろ陛下も・・・」
 強張った面持ちで、朱音は大きく息をついて立ち上がった。
「さ、そろそろ参りましょうか」
 エメの声に合わせ、朱音は床にまで広がる長くたおやかな純白のドレスを両手で持ち上げ、ゆっくりと部屋の扉へ向かった。
 一歩、一歩と慎重に足を進めてゆく。
 履き慣れない高いヒールの真っ白な靴。
 ずしりと重く、きらきらと散りばめられた宝石が光るドレス。 
 朱音は扉の前でもう一度大きく息を吸い込み、そして吐き出した。

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