AKANE



 城の敷地内に存在する真っ青な空を映した湖。
 その畔で一人ぼんやり湖の水面を見つめる少年の姿を朱音は見つけた。
 霞ががかった茶の髪は、時折暖かく心地の良い風に吹かれ、さらさらと揺れる。そのどこか淋しそうな横顔に、朱音は胸の奥がツキリと痛んだ。
 懐かしく、そして大好きだったあの少年とそっくりな横顔。思わず「ルイ」と声を掛けそうになるけれど、その少年が振り向いたときそれが彼では無かったことを痛感し、そして悲しい現実へと引き戻されるのだ。
「なぜお前が泣く」
 うんざりしたように、少年が溜息混じりに言った。
「ロラン・・・」
 朱音は、滲んだ視界の中、霞みがかった茶の瞳を見つめ返した。
「僕に再会できて、そんなに嬉しいとはな」
 皮肉めいた口振りは相変わらずだが、それが彼の精一杯の照れ隠しだということは、朱音にもすぐにわかった。
 朱音がこの少年に最後に会ったのは、メトーリア港での闘いの時で、その時は彼自身クロウの中にいる朱音には気付いていなかった。
「うん。ロランに凄く会いたかった」
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