3 year 君と過ごした最後三年  (version.mystery and suspense)


昨日、午後からいっしょに映画にいく約束をしていた理子は、昼過ぎになり急にお腹が痛くていけなくなったと伝えてきた。携帯電話からだった。


学年全体の携帯所持率は、七十パーセントといったところだろうか。


わたしはまだは持っていないかったけれど、理子がそれを使い半額で買った昨日期限のチケットは、郵送先に指定されていたわたしの家に届いていた。


一枚持て余したわたしは、代わりに裕也を誘った。


彼も携帯電話をもっていなかったけれど、家にいた。


ふたりの部屋の灯りは夕暮れや雨であれば自然に知れる。雪の道を、並んで歩いていった。


帰り道には小さいぬいぐるみをもらった。子いぬ似こきつねのぬいぐるみをもらった。クレーンゲームの景品だった。


「でも大丈夫だったの。電話だと死にそうな声してたよ」


わたしはそういい理子を見上げた。彼女はさらに手すりから身を乗りだしている。


「あたしよくお腹痛くなるんだけど、それは大丈夫。死んでたらここにいないし、勝手に殺したりしないでね」


そういって手すりに手をかけたまま、またコーヒーを口に含んでいく。


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