3 year 君と過ごした最後三年 (version.mystery and suspense)
大通りを越え住宅街に入ると、入り組み並んだ家の合間にマンションがいくつか点在する。その影に隠れ、歩道の雪が氷と化している。
十五分ほど歩くと、左手に小さな公園が見えてくる。
家二軒ほどの広さにブランコ、すべり台、砂場がある。ふたりが遊んだ馬の乗り物の下にスプリングがついた遊具もある。咲いていない桜の木もある。
「これやるよ」
そういい裕也が手を差しだしたのは、その桜の木枝を見上げわたしが歩いている時だった。わたしは彼に視線をあずけた。
住宅街の真ん中。白く薄い街灯。ふたりを、それを冷たく硬質な灯りが照らしだしていく。
文庫本(十五×十センチ)より少し小さいラッピング袋は、紙と布の中間のような手触りと同色のリボンによって、中身を包み守られている。
突然それを渡され、意味と状況を理解できないわたしはただ彼を見詰めている。
「開けてみろよ。カバン持っててやるからさ」
彼にうながされるままにカバンを預け、首で結ばれたリボンをほどいていく。