3 year 君と過ごした最後三年 (version.mystery and suspense)
クラフト色の細い紙(緩衝材)から、アルミ色のなにかが顔をだしている。
添えた右手から、立体的ななにかが伝わってくる。
左手の人差し指と中指がそれを捉(とら)え、導きだしていく。
夜のひかりに、そのフォルムが映しだされていく。
クラフト紙の蝶がひとつ、舞い落ちそして消えた。
「これ、どうしたの?」
わたしは思わず足を止めて裕也をみた。
「映画のチケットのお礼さ」
彼は少し顔を赤くしそういった。
「もらっていいの?」
「遥香がいやじゃなければ」
「ありがとう……」
一瞬、いいようのない戸惑いが走る。風がひとつ髪をさらっていく。
「……わたしもらうね」
それでもそう続ける。
黄色とピンクのチェック柄リボンは、それを装ったバレッタは、月明かりのなかでそのチャームなデザインフォルムをわたしにさらしだしていた。
手のうえで、なにも纏わずさらしだしていた。
髪をヘアゴムからほどき、バレッタをうしろ髪へと移してみる。