マザーレスチルドレン
「あんなみすぼらしい親子なんか呼ばなくてもねえ、


なんかこっちまで惨めになったわ」


「…… 」ユイは黙っている。


「おまけに帰り道で誘拐されるなんて、


いろいろ言われていい迷惑なんだから、まったく」


ルミは、そういいながら胸元の大きく開いた派手な


ブルーのワンピースの腰のしわを気にしていて娘の


ユイには見向きもしない。


「さあ、あなたはもう寝なさい、いくら明日学校が


お休みになったからって、もう遅いのよ! 」


「だって…… 」


「ママは今からお出かけするから、あなたはちゃんと


戸締りして寝るのよ、いいわね! 」


そう言い残すとルミは上機嫌そうに鼻歌を


歌いながら、頭痛のするくらいきつい香水の匂い


を残してマンションを出て行った。
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