マザーレスチルドレン
車に戻って乗り込もうとしたとき、トランクから微かに物音が聞こえたような気がした。


男は恐々とトランクに耳をつけた。


やはり遺体袋の中で身をよじる様な音と呻き声が漏れている。


(大変だ、ガキが生きてやがる)


男はあわててポケットから携帯電話を取り出した。


「ガキがまだ生きてますよ」


「ええ、確かに頭に弾ぶち込まれてましたけど。トランクの中で死体バックがごそごそ動いてやがる、気持ち悪くて」


「牧師さんに返してきましょうか?」


「はあ、無理ですか……」


「えっ!バラせって……、俺が!? とんでもない! 嫌ですよ、コロシなんてできませんよ」


「困ったなあ…」


「え、どこの研究所?」


「そこに運べばいいんですね」


男は車を出すと逃げるようにその場を後にした。
< 161 / 178 >

この作品をシェア

pagetop