マザーレスチルドレン
「父さん……」


男は薄れ行く意識の中でその声を聞いていた。


「父さん、もうやめて……」


「……エイジ……エイジなのか?」


「そうだよ、このままじゃあ、父さん死んじゃうよ」


「おお、エイジ……、よく還ってきてくれた」


男の頬に一筋の涙が流れ落ちる。


「これは、お前を蘇らすためなんだ……」


「わかってる、この子の身体を使って僕を再生させようって思ってるんだね?」

「そうだ、父さんはどうしてもお前にもう一度会いたいんだ、お前のデータは全てそろっている、生まれてからの記憶は全てコンピュータに保存してある、そのデータをこの子の脳の記憶を消去して上書きすればいいんだ、
人格の交換。出来ない事じゃない。その為の人工海馬シリコンチップの開発、二年間不眠不休でこの研究に没頭してきたんだ、それがやっと完成したんだ」
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