マザーレスチルドレン
「ありがとう、うれしいよ、すごくね。僕も父さんに会いたいよ、でも、このままじゃあ父さんが死んじゃう」


「……エイジ、父さんを許してくれ、あれは決して危険な実験じゃなかった」


「うん、わかってるよ。父さんを恨んでなんかないよ、あれは事故だったんだ」


「だから、この子の身体を借りてお前をもう一度……」


「もう、いいんだ、父さん、僕はもう死んだんだ……」


「エイジやめてくれ、父さんはお前が死んだなんて思った事は一度もないんだ、あれからもずっとお前と一緒に暮らしてきたつもりだ」


「……父さん」


「もう一度、お前をこの手で……」


コンピュータの中に記録されたデータにあるエイジの残留思念。


その残存する意識が微弱な電気信号となりコンピュータの電子回路を介して増幅され男の潜在意識に直接語りかけているのだ。


エイジは機械の中の幽霊として今、父親との再会を果たしているのであった。
< 175 / 178 >

この作品をシェア

pagetop