マザーレスチルドレン
「でもまあ、二十年前の食糧難は酷かったからな。あの時に比べれば今のガキは幸せだよ、ハルも生まれてなかったから知らないだろ」


「うん」


「あの頃、オレはまだ高校生だったし一番腹減る頃じゃん。部活行ってたし。地獄だったな……思い出してもゾッとする」


「いきなりきたの? 食糧不足」


「そうそう、いきなり。あっという間にスーパーから食べもんがなくなった」


「へえ」


「それまでは普通になんでもあったんよ。何でも食えた。カレーにラーメンだろ、牛丼、回転寿司。ハンバーガーだろ。それにフライドチキンだろ。スパゲッテイーにたこ焼き。お好み焼きに……」


夢中になって喋るマスター。


「もういいって、マスター」


ハルが手を振って制止する。


「おお、ごめん興奮した。まあ、本当に普通にみんながそんなの食ってたの。今思うと夢のようだろ」


「うん、オレの給料じゃ食えないよ、そんな高級料理」


ハルトがため息をつく。


「まあな、オレも食えないよ。政府発行のフードスタンプじゃあ無理だな。まあタコ焼きくらいは食えるけどな」


マスターは笑った。
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