マザーレスチルドレン

ヤマサキ先生

「まあまあ二人とも、もういいじゃないですか、やめましょうよいい加減で」


ハルトが仲裁に入った。

マスターはまだ不機嫌そうで、カウンターの奥の椅子に腰をおろすと前掛けのポケットから煙草を一本取り出して口に咥えると棚においてあったオイルライターで火を着けた。


「あれ、マスター煙草止めてたんじゃなかったっけ?」


ハルトが言うと、マスターは不味そうに煙を吐き出しながら、


「ああ、また禁煙失敗。仕方ねえな、オレ意志が弱いからさ。大体さあ、健康のための禁煙なんて意味無いじゃん。俺達はどうせ長生きなんてできないんだから」


「でも子供たちのために少しでも長く生きていたいって言ってたじゃない。マスターもレイコさんも」


「まあ、そうなんだけど。いろいろあるんよ生きてるとさ。ストレスっていうか」


マスターは灰皿に視線を落としてそう言った。


そして何気なくカウンターの横の小窓から外を眺めた。


「げ、あいつらまた来てるよ」


「昨日いたガキどもか?」


カジが身を乗り出して言った。


「昨日なんかあったの?」


ハルトが尋ねた。


「うん、ちょっとハルもこっち来て見てみなよ。気味悪いから」


表の通りで街灯の下、改造を施された大型の電動バイクに股がったアーミー服に身を包んだ数人の少年達がいた。


先頭で大きめの黒いサングラスを掛けた少年が静かにこちらを窺っていた。


「昨晩もあんな感じであそこで集まってたんだ。ねえ、カジさん」
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