マザーレスチルドレン
「うん、マザーレスチルドレンとかホームレスチルドレンとか言われてる奴らだよ。親に虐待受けた可哀そうな連中なんだろうけど、あちこちで悪さしてるらしいよ」


カジが顔をしかめながら話した。


「マスター、一応黒服隊に通報したほうがいいんじゃない?」


ハルトが心配そうに言うと、


「でもあいつらまだ何もしたわけじゃないし、ただ集まってああやってるだけだしね、今のところ」

 
黒服隊とは、現政府の下に配置された武装行動隊の俗称であり旧体制の警察と自衛隊の役割を統括再編した組織である。


主に国や地域の治安の向上を目的に編成された部隊で正式な名称は国防義勇軍といった。


しかし真黒の軍服で街を闊歩する姿は常に威圧的であり、今では陸海空軍と並ぶ第四の軍隊と云われていた。

 
「それに黒服の連中はあてにならないよ、通報してもまともに来た試しがないし最近は通報の電話にも出ないらしいよ。

奴ら交通違反との闇市の取締には躍起になるくせに、俺たち善良な市民が困ってる時には見て見ぬふりだとよ」


マスターは吐き捨てるようにそう言った。


その時、ドンっと大きな音がして店の奥にあるトイレのドアが勢い良く開いた。


「あーあ、まざーれすちるどれんはさあぁ。あいつら子供さらうらしいよぉ」
 

ハルト達三人は一斉に振り返った。


「先生いたんですか!」


ハルトとカジは声を揃えて叫んだ。
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