マザーレスチルドレン
「あんたたちが留守番してるの? 」


男はヤマサキを一瞥して不快感をあらわにした。


「じゃあ、あんたでいいから、ちょっといい?」


男は扉の外で手招きをする。


「へ、俺ですか?」


「あんたしか話せる人いないだろ?」


「はあ―― 」


カジがハンチングの上から頭を掻いている。


二人は店の外に出た。


「私は町内会長のオオクボというものだが」


「へえ―― 」


「へえじゃない、あんたは?」


「はあ、私はカジといいまして、ここの常連です」


かしこまってカジが頭を下げる。
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