マザーレスチルドレン

高和山に急げ!

東和町駅前ロータリー、ヒトミは運転してきた


小型の電気自動車を歩道脇に停車させた。


腕時計に目をやる、午後十時四十二分。


夜半に降った夕立が上がり駅ビルの上に


青白い月が出ていた。


最終電車が出たあとの駅構内は閑散として静まり返っている。


ヒトミは車を降りるとコンコースを巡回していた駅員を呼び止めた。


薄いブルーの夏用の制服を着た若い駅員は怪訝な顔をして立ち止まった。


ヒトミは手早く名刺を渡すと先程の誘拐事件の事を尋ねる。
< 85 / 178 >

この作品をシェア

pagetop