マザーレスチルドレン
左足を引きずりながら歩き出した。


不思議と痛みは和らいでいた。


すこし走ってみた。


───大丈夫だ、走れる。


早く追いかけないと、母さんが見えなくなってしまう。


走った、全速力だ。喉がからからだ、水が飲みたかった。


でも今はそれどころじゃない。


はやく母さんに追いつかないと。


どこからか風が吹いてきた、すこし元気が出た。


もう少しだ。母さんに手が届く。


風に乗って母さんの匂いがする。


懐かしい、匂いだった。
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