マザーレスチルドレン

ヒトミとユキオ

ヒトミが運転する車は高和山の外灯もない暗くて


険しいワインディングロードをかなりのスピードで


駆け上っていた。


高和山山頂に続くこの坂道には四十八ものカーブがあり


途中ガードレールが途切れてる区間も多くベテランの


ドライバーでも難所とされている。


ましてや雨上がりでまだ濡れた路面は滑りやすく、


少しでも気を抜くと街乗り用にセッティングされたこの


小型車のタイヤはグリップ力を失いそうになった。


しかしヒトミはグリップ限界でコーナーをクリアいく。


───こんな道でスリップなんかしたら、


谷底に真っ逆さまじゃない。冗談じゃないわ、


ユキオを連れ戻すまでは絶対に死ねない。
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