一年と二ヵ月


「でも、指輪拾っただけで
わざわざお礼なんて、律儀な人だね。」


ほんと。

あたしだったら、
ありがとうございます、
って言ってもう終わり。


「それだけ、その指輪が
大事だったってことでしょ。」

七海は深く考えこむ。


「そんなに大切な指輪だったら、
やっぱ止めた方がいいんじゃない?」

七海は顔を上げる。

「なんで?」


なんでって…
だって、そうでしょう?


「それだけ、その『はるか』って人が
その人にとって大事ってことだよ?

あたしのせいで不倫とかでもめて
もし離婚、とかになったら…」


そんなの申し訳ない。
ていうか、そんなの絶対ダメ。


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