追いかけっこ(仮)
「華恋?」
途中で言葉が切れたからか、
龍樹が不思議そうに振り返った。
私は反応することも忘れて、
一般車が数台留まっている一軒の家を見めた。
「……あそこか。」
私が無言で頷く。
ギュッ、
「大丈夫だ。」
龍樹は私の手をギュッと握って、
そう呟いた。
「今日は一晩中ここの家に居るから。
助けて欲しいときに呼べよ。」
そう言って、私に何かを握らせた。
「……防犯ブザー?」
手渡されたのは、防犯ブザーだった。
「あぁ、助けて欲しかったら、それ鳴らせよ?」
私はこくんと頷いて、
防犯ブザーを制服のポケットにしまった。