追いかけっこ(仮)
「お、龍樹来たか。」
龍樹の父親……鬼ボスが龍樹を見つけて声をかけてきた。
「親父。」
「……ん?隣のお嬢さんは?」
鬼ボスは私に気づくと、
龍樹に問いかけた。
「あぁ、クラスメイト。
ここんちのお嬢さんに呼ばれたらしい。」
私は無言で頭を下げる。
「あぁ、貴女が華恋さんですか?」
私はコクリと頷く。
その顔に、もう華恋はいなかった。
だからといって、怪盗Vになったわけでもなく、
ただの生気の抜けたような感情のない瞳。
“風音の華恋”になっていた。
「……華恋?」
「ッ、この屋敷の中で私の名前を呼ばないで。」
「は?」
「いいから。」
風音に聞かれたら、
龍樹にも何か起こりかねない。