小野さんとさくらちゃん
目の前に大好きな小野さんと2杯のコーヒー。

「それでね、」

こんなことがあろうかと驚きつつも、小野さんがバイト先での怪奇現象を冗談まじりに熱く語り始め、一緒に笑っているうちに私の緊張も少しずつ解けていった。

普段から他人の話にうんうんと頷いてばかりの私は、話上手な小野さんにぐいぐい引き込まれて大きな口を開けて笑った。おかげでお腹が痛い。

「もうこんな時間か。」

カフェの窓に夕陽が差し始めた頃、私と小野さんは揃って店を出た。

俺がお邪魔したんだし、と財布をぴらぴらと指で摘む小野さんのお言葉に、素直に甘えることにした。

「そのかわり、夕飯の買い物つき合ってくれないかな?」


もちろんOKに決まっている。
奢ってもらったのだからというよりは、一分でも多く一緒にいたいから。


夕食のご予定を聞きながら、商店街のスーパーまで並んで歩いていく。小野さんと二人で歩けるなんて夢みたいでついつい早歩きになった。

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