おじいさんの懐中時計
ない――!!
ない!!
あの家が――。
あったのは、工事中の立て札だけ。
作業中のおじさんが、声をかけてきた。
「僕、危ないよ。」
「おじさん、ここは!?」
「ここかー。ここは、もうすぐ、工場が立つんだよ」
「ここにあった家は?」
おじさんは、しばらく考えて、
「家?。ああ――もうだいぶ前のことだろう。そういえば、10年程前には、大きな家が建っていたそうだね。」
「10年程も前…。」僕が呟くと、
「そうだよ。ついこの間まで、ここは空き地だったじゃないか。危ないから、柵の中は、入らないようにするんだよ。」
そう言うと、背を向けて、行ってしまった。
僕は、おじいさんに会った。夢の中で――?。
いいや、夢じゃない。夢じゃない!。
だってほら、ポケットの中には、懐中時計がある。
「おじいさん、昨日のことは忘れないよ。もう、わがままな僕とは、さよならするんだ。」
僕は、ポケットから懐中時計を出して、見つめながら、そう言った。
おじいさんが、木陰で微笑み、頷いているような気がした。
END
ない!!
あの家が――。
あったのは、工事中の立て札だけ。
作業中のおじさんが、声をかけてきた。
「僕、危ないよ。」
「おじさん、ここは!?」
「ここかー。ここは、もうすぐ、工場が立つんだよ」
「ここにあった家は?」
おじさんは、しばらく考えて、
「家?。ああ――もうだいぶ前のことだろう。そういえば、10年程前には、大きな家が建っていたそうだね。」
「10年程も前…。」僕が呟くと、
「そうだよ。ついこの間まで、ここは空き地だったじゃないか。危ないから、柵の中は、入らないようにするんだよ。」
そう言うと、背を向けて、行ってしまった。
僕は、おじいさんに会った。夢の中で――?。
いいや、夢じゃない。夢じゃない!。
だってほら、ポケットの中には、懐中時計がある。
「おじいさん、昨日のことは忘れないよ。もう、わがままな僕とは、さよならするんだ。」
僕は、ポケットから懐中時計を出して、見つめながら、そう言った。
おじいさんが、木陰で微笑み、頷いているような気がした。
END

