おじいさんの懐中時計
――「誰だ?、誰か居るのか?。」

びっくりして、後ろを振り向くと、白髪の頭にハンチングをかぶった、おじいさんが立っていた。

「真琴君じゃないか!。」

「どうして僕を知っているの?。」

僕を見て、おじいさんは笑顔で言った。

「そうか、しばらく会っていなかったから忘れてしまっても無理はないな。真琴君が幼い時以来だから仕方ないか―。…そうだ、ちょっと待っていてくれ。」

おじいさんは、家に入ると、しばらくしてから1枚の写真を持って来た。


「みてごらん。」


差し出された写真には、父と母、おじいさんの膝の上に幼い僕が写っていた。

「真琴君は大きくなっても、顔立ちが昔のままだったから、すぐわかったよ。それにしても今日はどうしたのかな?。」


まるで僕の心の中まで知っているような口ぶりに、僕は何も言えず黙っていた。

「話したくなかったら、まぁ、いいさ。」

何だか不思議と素直になれそうな気がした。



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