おじいさんの懐中時計
「わしは、この家に1人で住んでおるが、淋しくてな。お手伝いは居るが、家族が居ないのは、本当につまらないものだよ。」
おじいさんは、ポツリとそう言った。

「そうかなぁ―。僕は1人の方が気楽でいいと思う。口うるさい親や、妹なんて居ない方がいいと、いつも思っているよ。」

「1人ぼっちがいいのか?。」

「うん、出来れば石ころみたいに、誰にも気にされないで暮らせたら、サバサバするね。」


――僕は、調子に乗って、少し強気で言った。


本当はとても淋しがりなのに―。


「なってみたいか?。」

「エ!?。」

「1人にだよ――。」

「あぁ、そう出来ればね。」

「家に帰ってごらん。1人ぽっちということの意味がわかるよ。」

「う……ん?。」

僕は、おじいさんの言っている意味がわからないまま、庭をでた。



「――真琴君!!。」

呼び止められて、振り向くと、「また、ここにおいで!。」


おじいさんは、笑顔で手を振っていた。

「うん!。」
少し気が楽になった。母さんには、素直に謝ろう。そう思った。



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