うしろ姿
《振られたの?》
「……う、…っ…」
《だから辞めればって言ったのに…》
「…っっ、ぅ…」
「《やっぱり、俺にしない?》」
電話からも玄関からも伶の声。
玄関に突っ立ったままの私には伶の声がよく聞こえた。
私は電話を切って、ドアは開けないまま、伶に話しかけた。
「航のこと、
忘れさせてくれますか…?」
「…華耶。」
「なによっ…」
「無理だよ。」
「……な、んで…?」
「忘れるのは、無理だよ。」
俺にしない?って言ったのに。
何でそんな無理なんて言うの?