いつか君を忘れるまで
「まあ、褒め言葉と受け取っておくよ。」

俺は、聞き慣れない言葉に少し照れ臭くなって頭を掻いた。

「そう言う所もカワイイよ。」

彼女は、またクスクスと笑い始めた。

「ありがとう、話しきいてくれて。ちょっと楽になったよ。」

ミホちゃんはそう言うと、優しく微笑んだ。
やっぱり、女の子に涙は似合わない。

「そう?良かった。」

俺も、微笑みを返した。

ミホちゃんは、そのままそっと俺の肩に身体を預けた。

「あ~あ。やっぱり、年下でも良平くんみたいに優しい人が彼氏だったら良かったな。」

彼女の温もりが、肩に伝わる。
ミホちゃんは、ギュッと俺の腕を抱きしめた。

でも、そんな行為とは裏腹に、俺は至って冷静だった。

・・・彼氏ねえ。

頭の奥で、そんな言葉がこだますると、俺は無意識に口が動いた。

「俺みたいな奴、やめといた方がイイよ。」

その言葉に『えっ?』とミホちゃんが聞き返してきたが、俺は聞こえないふりをして、壁をじっと見つめていた。

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