いつか君を忘れるまで
「グチ聞いてくれてありがと。」

服を着たサオリさんは、思いの外スッキリした表情をしている。

きっと俺の『でも、彼の事が好きなんでしょ?』が効いたのだろう。

荷物をまとめ、ヒールを履く後ろ姿を見送る。

「あ!」

短くそう言うと、サオリさんはクルリと俺の方へ振り返った。

「良平も、早く彼女作りなよ。」

俺の頬にキスをすると、サオリさんは『ありがと』と言って軽やかに部屋を出て行った。

「・・・彼女、ねえ・・・。」

俺は、サオリさんの残り香がする部屋で、またタバコに火を付けた。

下駄箱の上に置いていた肉じゃがは、すっかり冷めてしまっていた。
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