いつか君を忘れるまで
「奏ちゃんだったら、いつでもOKだよ。」

俺は、なるべくいつもの調子でそう言った。

『じゃあ、予定を見てまた連絡しますね。』

奏ちゃんの『また連絡する』と言う言葉が頭の中でこだまする。

また連絡をしてくれるのか。
関係を続けてくれるのか、俺と。

「うん、分かった。電話ありがとう。」

ぼーっとする頭でそう言ったが、急な展開に思考回路は思うように動かない。

『いえ。こちらこそ、助けて頂いてありがとうございました。では、失礼します。』

言葉は堅いが、声はふわりと柔らかい。
ずっと聞いていられるような、心地の良い声だ。

「うん。じゃあね。」

俺は、そう言って携帯の通話終了ボタンを押しながら、奏ちゃんの優しい声の余韻に浸っていた。
< 52 / 55 >

この作品をシェア

pagetop