赤い狼 参
「馬鹿って何よ、馬鹿って。」
「馬鹿だろ。男に警戒もできねぇんじゃ。」
…隼人さん、絶対に根に持ってますよね。
さっきから口を開けばそれしか言ってないですよね。
「お前は無邪気で天然。それはそれで可愛ぃと思ってるが…時にはそれでお前が危険なめに合う事もある。
まぁ、簡単に言えば危機感ゼロなお馬鹿ちゃんって処だな。」
「…意味分かんないんだけど。」
「分かれよ。」
「分かんないよ。」
「じゃぁ、せめて自分が女だって事を自覚しろ。」
真面目な顔をする隼人を見て、
自分が女って事ぐらい分かってるんだけど…。
と心の中で呟く。
「どうせ、それぐらい自覚してると思ってんだろ。…全然自覚できてねぇよ。」
隼人のその言葉にムッとする。
「…まぁ、分からなくてもぃぃ。その代わり、俺以外の奴にキスとかされたらその倍キスしてやるから。」
そう言いながら隼人は部屋を出ていった。
この言葉を聞いて血の気が引いた私を置いて。
…私、警戒を頑張ります。
この日、私は男に対して警戒心を常に抱く事を決意した。