赤い狼 参





でも、私が空気を吸うとすぐに司が私の口を塞いでくる。


キスという行為が何度も何度も角度を変えて繰り返される。



されるがままになった私の口から唾液がだらしなく溢れ落ちた。



その内、私の体から力が抜けていって体がガクンッと傾いて床に膝をつく。


それでも司は止めない。


次第に薄れていく思考の中、私はグルグルと考えを巡らす。




「ンッ、んんっ、つーちゃ…」




司が私の後頭部を押さえて激しくキスをしてくる中、私は床に仰向けになった状態で必死に名前を呼んだ。




そう、私が忘れていた遠い記憶の人の名前を。



それでも聞こえていないのか、聞いていないのか唇から首筋にキスを落としていく司。



そして、司が私の耳の近くの首筋に吸い付いた。




「ひゃあっ…ン、つーちゃん!」




自分でもビックリする程の大きな声だった。



司もさすがに聞こえたのか行為を止めた。



それによって解放された手でホッと胸を撫で下ろす。




そして、私の上に乗っている司を見上げる。


…やっぱり、勘違いじゃなかった。





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