天使のキス。
顔だけ後ろに向けて、


「沙耶に悩みなんて打ち明けたとたん、その場で全部もろバレだ」


口元に笑みをたたえつつ、毛先を器用に遊ばせた色素の薄い髪を指に巻きつける。


でも、健ちゃんのその優しさは、実は――…


実は――…


実は…



「愛里の面白い話、期待してるよ?」


私利私欲のためだったりする。


「…はぁ」


小さくため息をつくあたしとは対照的に軽い足取りで、中等部以来いつもの相談場所、学園自慢の温室の前まで来ると、


健ちゃんはブレザーの内ポケットからおもむろに、ボールペンと手帳を取り出した。


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