天使のキス。
「本当は、な。
悠に――…。
家族のあたたかさというものを、経験させてやりたくてな。
あの方法を思いついたんじゃ」


じいじは優しいおじいちゃんの顔に戻って、また、遠くを見つめた。


「愛里ちゃんの家族を選んだのは――…。
ワシが知ってる中で、愛里ちゃんの家族が一番あたたかかったからじゃ」


「えっ!?」


「空手大会の時、空手合宿の時、空手の練習の時。
いろいろな場面で、時間をかけて、私は君たち家族を見てきた。
そして、あの結論に至ったわけだ。
このご家族に、悠を預けたいと思った。
悠の冷たい殻を、きっと溶かしてくれると思ったからだ。
感情を閉じ込めて、利用価値があるかないかだけで人を判断する悠に、人間らしい感情を呼び戻して欲しかった」


じいじの顔はどんどん真顔になっていき、言葉遣いも紳士的になり、あたしのことも愛里ちゃんから君に変化していた。

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