天使のキス。
「…っ。
また――っ!?」


ここのマンションは、何回ロックを解除させれば気がすむんだ。


「ウチの家なんか、カギを開ける場所は、ひとつだっつーの!」


開かないドアを前に、ついイライラして、文句を言ってしまった。


「わかったわよ。
かざせばいいんでしょ?
カギを!」


キレ気味にカギをかざすと、スーッと横に開くドア。


「ふぅ。
これで、もう終了?
…って、そんなわけないか。
今から健ちゃんの家を探さないと――…
あぁ、マンションって面倒くさい…
あたし、すごく急いでるのに――っ!」


ぶつくさと文句を言いながら、28階すべての家のドアのカギ穴にカギを差し込んで、健ちゃん家を突き止める決意を固めるあたしの前――…
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