天使のキス。
きゃっ、きゃっとはしゃぐたびに、茶色のふわふわの髪が揺れ、目鼻立ちのはっきりとした綺麗な顔を華やかに彩る。


あ―…、沙耶。
また綺麗になってるよぉ。


入学式の会場の体育館に向かう道すがら、沙耶の顔をチラリと盗み見ていると――…


「きゃっ…」


どんっという衝撃とともに、人にぶつかった。


「ご…ごめんなさいっ…」


ぶつかって痛い腕を押さえながらそう言うと――…


「大丈夫?」


そんな涼しい声が、あたしの頭の上、はるか上空から降ってきた。

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