モデル同士の恋
本当はすっごく痛いけど。

多分家までは歩けないから。


せめて電車は頑張らなきゃ。


そう思っておぼつかない足を必死で動かす。


「おいおい、マジで大丈夫かよ。」

そんなあたしを見かねてか颯太はまた乗るか?と聞いてくれる。


「もう少しだし大丈夫だって。」


あとは階段をのぼるだけ。


でも土日の夕方は思ったよりも込んでいて、時々颯太を見失いそうになる。


今ここで颯太とはぐれたらあたし家に辿り着けない…。



そんなあたしは必死で颯太のあとを追いかける。




「はー。疲れた。」


「ご苦労さん。

あ、時間。」

そう言って颯太は慌てて携帯を出して時間を確かめる。


「あと3分だ…。」


絶対に間に合わない。


きっと3分後は電車の中だ。


「あたしのせいなんだしいいよ…。」


あたしが靴ずれなんてしなかったら、5分以上は縮まったはず。


「いや、今日の主役はお前なんだから。

悪い悪い、そう落ち込むな。」

あたしが落ち込めば颯太は慌ててそう付け足した。




…颯太が優しい。


「なんかさ、颯太も変だよ。」


颯太があたしを変と言うように。


あたしも颯太が変だと思う。


悪くはないんだけどね。



「俺のどこが。」
「優しい。」


あたしは即答。


今までだって優しくない訳じゃなかったけど、言葉に表すことはなかった。



< 388 / 451 >

この作品をシェア

pagetop