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「!?」


びっくりして後ろを振り返ると、ショウが優しく微笑んでいた。
…耳を塞いだのは紛れもなくショウで、黒の手袋から伝わる熱が温かい。


「耳、すぐ赤くなっちゃいそうだね。…耳あては?」

「持ってない。」

「そっか。じゃあ買いに行こうね。」

「別に今日じゃなくていいけど…。」

「今日は俺が温めてあげるよ。
…とりあえず、早く車乗ろう。」

「うん。」



少しだけドキッとする心臓を抑え、車に乗った。
…4ヶ月一緒に生活してきたけれど、ショウは他の男とは全然違った。
手を出してくることは、ない。
キスもなければ、肌を重ねたことだって一度もない。
触れてくることはあるけれど、それ以上は何も。



それでも、どこかそれに安心していて、変わっていく自分を感じてた。
相変わらず、お父さんから電話はこないけれどそれに落ち込むことは減っていった。
だって…ショウがいてくれたから。


少しだけ、笑えるようになった。
美味しいものは美味しいと言えるようになった。
安心して眠れる夜が…増えた。


普通の人なら普通にできることができていなかった自分。
それが、ショウと過ごすうちに変わって…いた。


「じゃ、出発するね。」

「…安全運転で。」

「分かってるよ。」


あたしの頭の上に、ショウの大きな手が乗った。
ポンポンと軽く撫でるその仕草に、やっぱりどこか安心する。

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