7 STARS
「不意打ち~…。」


なんともだらしない声で呟いた。
でもそのくらいの衝撃だった。少なくとも今の汐織にとっては。


齊藤が触れた頭には今も熱が籠っているし、その手の優しさは甘く身体の中に浸透していた。
それで最後はあの笑顔だ。
…あんなの、子どもたちの前だってなかなか見せないのに。
ましてや一対一の状況下で見せられたことなどいまだかつてない。


「う~…なんなのよー私の心臓。きゅんとか鳴るなバカー!!」


胸を上からぎゅっと押し付けた。
齊藤にきゅんとかいう少女漫画的効果音が鳴る自分が許せない。
だって相手はあの齊藤だ。
普段はただ皮肉を言って去っていく、厳しくてよく分からない『上司』。


「齊藤先生が齊藤先生らしからぬことをしたからちょっとおかしくなっただけだよね。うん。」


自分にそう言い聞かせる。
そしてメイクを落とすためにミラーの前に立った。
すると、妙に赤い首筋に目がいった。
…こすられた後だ。


「…強くこすりすぎでしょ、齊藤先生。」


なぜそんなに強くこすられたかなんて、今の汐織には知る由もなかった。

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