7 STARS
「そ…そんなことないですよ。普通です!!このくらいは。」


ショートパンツに胸元が少し開き気味のTシャツと、汐織にとってはほとんど普段着に近かったが、どうも齊藤のお気には召さなかったようだ。


「似合わないもの着ちゃってすみません。」

「似合わないとは言ってない。」


だーかーら!!きゅんって鳴るなってば!!
汐織は自分の胸を叱りつけた。
そしてそんな汐織に気付かない齊藤は、そのまま言葉を続けた。


「俺から離れるなよ。この前みたいなことになったら困る。」

「はっ…はいっ!!」


…心配してくれたのかな?
そんな甘い考えが浮かんで頭をブンブンと振った。
ダメダメ!!今は仕事中なんだから。
考え直して気合いを入れた。


「行くぞ。何か変なもん見つけたら俺に言え。」

「はいっ!!」


齊藤から20センチほど距離を取ってピッタリと横についた。
歩くスピードはおそらく齊藤が汐織に合わせてくれているのだろう。
齊藤の方が明らかに足が長いのに汐織がせかせか歩かなくていいのはそのためだ。


人混みの多い中を仕事という目的で歩くのはなかなかに大変だということは、歩き始めて1分で気付いたことだった。
歩き始めて5分後。齊藤が不機嫌に呟いた。


「…ったくお前は、いつも面倒事ばっか増やしやがる。」

「えぇ?私、何かしましたか?」

「んでもねぇよ。」


露出度の高い服を着ることによる弊害に、汐織は全くもって気付いていなかった。


< 66 / 268 >

この作品をシェア

pagetop