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「ママぁー…どこぉ?」


不意に汐織の耳に子どもの声が聞こえた。


「あ…齊藤先生!!迷子の子がいます。」

「あ、おいっ!!」


それだけ言い残して声が聞こえた方に向かって走る。
声のした方で、小学2年生くらいの女の子が泣いている。


「迷子になっちゃった?」

「…っく…ママぁ…。」

「ママと一緒に来たの?」

「うん…でもいない…。」

「先生に名前教えてくれるかな?」

「先生…?」

「うん。こう見えても、お姉さん、先生なんだよ?
名前教えてほしいなぁ。」

「真姫…。」

「真姫ちゃんかぁ。ママとはどこではぐれたのかな?」

「あっち…。」

「そっか。じゃああっち行ってみようか。」


齊藤がまだ来ていないのを感じてはいたが、とりあえずこの子が優先だと思い、足を進めた。




「…はぐれやがってあのバカ…!!」


こんな齊藤の声は汐織に聞こえるはずもなかった。


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