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「痛いのか?」

「あ…いえ。そうじゃなくて。気持ち悪いなって思っただけです。」

「大体お前は隙が多いんだ。」

「え?」

「今日の格好だって露出しすぎだっつっただろ。
だから離れんなっつったのに…突っ走るし。」

「だって子どもが泣いてて…。」

「分かる。その時のお前の心理は想像すれば。
でももう少し危機管理、何とかしろよ。」

「その件に関しましては2度も救っていただいてるので何も言えませんが。」


…どうやら齊藤は心配半分、怒り半分といったところらしい。
それは汐織にも掴めてきた。
でも、そんなことよりも今汐織の頭の中を占めているのは、さっき齊藤が言った2つの言葉だった。


『汐織』『俺の女』


思い出すだけで身体中の血が顔に集中する。
でも好奇心から、訊いてみたかった。


「あの…なんで呼び捨てだったんですか?」

「あ?あー…教師という身分を明かすのもなと思ったし、とすれば彼氏のフリをした方が色々と面倒じゃないなと思ってな。」

「なるほど…。でもびっくりしました。いつも『浅野先生』か『お前』って呼ばれるから…。」

「まぁ…状況が状況だ。特殊例だとでも思え。」

「分かってますよー。」


…そっか。そうだよね。フリ…。うん、フリ。
ちょっとへこんでいる自分に意味が分からなくなりつつも、汐織は平静を装った。


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