zinma Ⅱ
夜。
日が暮れ、山には明かりがまったくなくなる。
シギはまだ、『共鳴』に成功することができずにいた。
今日は運良く満月だったから、シギのいる広場では、月の光でなんとか周りを確認することはできた。
しかし一歩森に入ってしまうと、何も見えない。
シギはだんだんと焦ってきた。
夜にではない。
暗闇にではない。
『共鳴』が、できないのだ。
どれだけ周りに集中しても、『共鳴』することができない。
魔力の気配はするのだ。
これは小さいころから。
自分がルミナ族だと知る前から、これだけはできていたけど。
『共鳴』はできない。
その理由がわからない。
『共鳴』は魔力を感じることではないのか?
何がだめなんだ?
それすらも、わからない。
それまで集中していた心もついに折れ、シギは一度地面に座り込んだ。
首の後ろでまとめた腰まで伸びた真っすぐで艶やかな紺色の髪が、肩をつたって、胸の前に垂れる。
切れ長の金色の目を細め『共鳴』のことを考えようとするが、それは止め、少し休む。
両腕を後ろの地面につき、足を投げ出し、目を閉じて夜空をあおぐ。
山の爽やかな夜風が脇を通り抜け、張っていた気が少し楽になった。
目を閉じたまま、冷静になった頭でゆっくり考える。
『共鳴』するというのは、一体どういう感覚なのだろう。
と、そこで、あることを思いつく。
自分には強力な仲間がいるではないか。
両親の記憶。
それをたどって、なんとか『共鳴』の感覚を理解できないだろうか。
そこでシギは、頭の中に取り込まれた両親の記憶を呼び覚ます。
ゆっくりと、両親が蓄えた魔術の知識を、ひとつずつ紐解いていく。
あった。
『共鳴』。
本来から、ルミナ族の子供は、小さいうちに数ヶ月の山篭もりを経て、『共鳴』を覚えるのだという。
だがそんなに、待てるはずがない。
感覚だ。
両親の感覚を、呼び起こせ。