群青色の恋     〜私たちの恋愛模様〜
「お前を家まで送ったら

私はまた病院に戻る。戸締まりしっかりしなさい。」



親父は腕時計を見ながら


そう言った。




…けど、 俺は


今すぐ親父から離れたかった。



さっさと靴を履き、


「大介(ダイスケ)んとこ寄ってくから歩いて帰る」


─ 大介とは近所に住む、幼馴染みだ。



「あんまり帰り遅くなるなよ。受験生なんだから…」


最後まで親父の話を聞かず


俺は校門まで後ろを振り返らず、走った。


遠くから親父がなんか言ったみたいだが

ほとんど聞き取れない。



…こんなに走るのはいつ以来だろう。


体育の授業なんか手を抜いている俺に



初秋の冷たい風が


頬をかすめた。
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