薫風-君といた軌跡-





4月の始め。
今日の風は、やたら生温く
頬に纏わり付くような風だ。


歩道を歩けば足元は
湿り気を帯びた桜の花びらで
埋め尽くされていた。



まだ固くてぎこちないローファーで
花びらの絨毯をめくりながら歩いた。





「お前さ、」


リュウが遠慮がちな声で言った。


俺はリュウの顔を見なかった。

何となく、次の言葉が
わかっていたから。


先回りして答を探ろうとしたが
それよりも早く
リュウの声が追ってきた。




「愛美さんに普通に接してやんねーの?」




頬の裏を強く噛む。



俺は別に悪くないのに
俺だけが責められている気がして
思わず声を荒げた。





「知らねぇよ」



リュウも俺を見てはいなかった。




お互い、何かつっかかっているかのような何とも言えない空気が流れたが

それすら一瞬で
春の風が連れてってくれる。





「…だよな、わりぃ。コウ」



リュウの声は穏やかだった。



「別に」




俺らはまた花びらを
めくり上げながら
学校への道を急いだ。



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