親友と傘
昔、まだ家族がいた頃、よく外食にきたレストランの前まで来た。
なぜか足がここに進んでいた。
中に入ろうか少し迷ったが結局勇気がなくまた宛てもなく歩き続けようと振り返ったとき雨の音の中に紛れ聞き覚えのある声がかすかに聞こえた。向こうの道からこちらに来る2人の人・・・。
そこには3年ぶりとなる元・父の姿があった。父は笑顔で自分より若そうな女性とレストランに向かっていた。
父とすれ違いざまに目が合った気がした。
(本当に一人ぼっち・・・)
3年間、屈託の心の底にもしかしたら父が迎えに来てくれるのではないかという思いがあった。でも、父は母と同じく新しい家族を・・・家族になってくれる人が見つかっていたんだ。
私はいらないんだ。
視界に入る人たちが皆、幸せそうに笑い、そして、私をあざ笑っているような気がした。
心がつぶれてなくなっていく。
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