月夜の太陽
テラスから見上げる空は綺麗な水色で、ところどころに大きく真っ白な雲が浮いている。


空はこんなに穏やかなのに私たちの心は荒れている。


そう言えば、海も空に負けないほど綺麗な青色をしているとお母様に聞いたことがある。


海……私はまだ行ったことがない。


いつか行けるといいな。



「ソル?」

『変なこと考えるなよ』



私の存在を確かめるように後ろから抱きしめるソルの腕からは不安が伝わってくる。


ほんの少しだけ背中をソルの胸に預け、風を感じるように目を閉じた。



「海、行きたい」

『海?』

「そう、海。行ったことある?」

『あぁ』

「私はお母様から話を聞いただけで見たことないの。海でなにするの?って聞いたら、水着を着てスイカ割りしたりバーベキューしたりして遊ぶんだよって言ってた。楽しそうだなって思った」



ソルの腕に力がこもり私はソルの腕を抱くように上から自分の手を重ねた。



『海に行こう。だけど………』

「だけど?」

『水着はなしだ』



ソルがそんなに可愛いことを言ってくれるとは思っていなかったため、頬は自然と緩み笑みが零れた。


恥ずかしそうにしているソルを背中で感じながら、顔の緩みは暫く治ることはなかった。






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