月夜の太陽
『ローズ様が言っていた通りだ……お前は表情を変えないんだな』

『変えない……別に故意にそうしているわけではない』

『そうかもしれないが、そんな人生つまらないだろ』

『自ら命を絶たなかったということは、そうつまらないとは思っていなかったのかもしれない』



カインは目を伏せ表情からは読み取れないものの、声は酷く穏やかだった。



『エリーに会った……』

『……そうか』



カインから何かを聞いてくることはなく、お互い無言のままが続き、だけどお互いの存在を見失わないように体からは薄っすらと光が零れていた。


そんな中カインの姿をこの目に焼き付けるかのようにジッと見ていた。


写真も肖像画も姿を確認できるものは何一つ残っていない為、カインの姿を見られるのはこれが最後だろう。


俺が生きていても死んでいても、どちらにしても………。






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