月夜の太陽
俺は深呼吸をして唾を飲み込み、墓石でカインに伝えたことをもう一度口にした。



『ローズ様を助けてくれてありがとう。お前は許されないことを沢山してきた……それは一生許されることじゃない。だけど、ローズ様のことは礼を言いたかった』

『……お前に礼を言われることではない』

『愛する人ができた…それはローズ様の娘だ……礼を言わずにはいられない』



カインと視線が絡み合い、カインの目は鋭く冷たく感じられる雰囲気だと思った。


カインの事を知らない者であればとても威圧的に感じるかもしれない。



『……自分に子供がいるなんて知らなかっただろ』

『相手はなんとなく予想はつく。ガキをつくるつもりはなかった……ただの気まぐれだ』



あまりにも正直にものを言うもんだから、俺は思わず笑ってしまった。


親ぶった態度どころか悪い事は何一つしたことがないとでも言いたげな態度だ。



『もう時間だ。エリーにもしまた会うことがあれば伝えてくれ、一緒に過ごした時間は本当に幸せな時間だったと………』

『ローズ様には……』

『あの女にはもう気持ちは伝えてある』



そう言ったカインは優しく笑い、ローズ様への愛が俺にも伝わってくるようだった。



『じゃあな、親父』



優しい笑みから口角だけを上げる笑みへと変わり、親父はそのまま静かに姿を消した。






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