シンデレラになりたくて~エリート専務と秘密の恋~
『うっ…』

一滴、ポタリと落ちた瞬間、それは堰を切ったように流れ出した。

『うっ…、う、うわぁぁん…、何で…、好きなのに…、専務…っ』

私は一人で声を殺してそのまましばらく泣いた。




―――あの時に、全て終わった筈なのに…。

「瑠奈ちゃん、俺、先にシャワー使うね」

ネクタイを緩めながら田村さんが私の顔を覗き込んで言う。

「あ、はい。どうぞ」

一瞬彼を見た後、ホテルの窓に視線を戻し、夜景を見下ろしながら私はそのまま振り返らなかった。

今、彼に顔を見られたら、きっと気付かれてしまう。

あなたを…愛してはいない事…。


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