ちぐはぐ遠距離恋愛
“助けて"って言いたいけど言葉が出ない。
「具合悪いの?水飲む?」
必死に頭を振った。
「違…っ」
将ちゃんがあたしに触れたとき、バランスが崩れた。
「おっと」
将ちゃんがあたしを支えてくれた。
端から見たらそれは抱き合ってる状態。
でもあたしは気づいてない。
きっと鈍感な将ちゃんだって。
だから……。
両側から現れた諒太と高杉先輩にも…気づかなかった。
「「何、やってんだよ」」
二人で顔を上げた。
あたしは向かって右を。
将ちゃんはあたしから見て左を見た。
「先輩……っ」
「諒太」
抱き合ってる状態に気づいてないあたしは、厳つい顔をしてる二人に首を傾げる。
先輩は泣いてるあたしを見るなりズカズカ歩いてきて、
「離れろっ!」
あたしと将ちゃんを引き離した。
「お前、ムダに足早い!」
そう言いながら、先輩はあたしをぐっと引き寄せる。
(将ちゃんに、先輩……そんでもって諒太って)
どんな偶然だよ!
それとも、これも奇跡だったりして。
「兄貴、何してんだ?」
「兄貴?」
高杉先輩がビックリした。
「村野の兄ちゃんか?」
「村野将太です」
将ちゃんが立ちあがる。
スラリと長い足が目立つ。
「真白ちゃん、この人に会いに来たの?」
「は?違います」
「だって抱き合ってた」
「「抱き合ってた?」」
あたしと将ちゃんの声が重なった。
「あたしがバランス崩して、」
「俺が支えただけだよ」
「「ね??」」
二人で顔を見合わせる。
「ハモりがウザい」
諒太が髪を掻き上げた。
「もう近づくなよ?」