ちぐはぐ遠距離恋愛
(先輩?)
「俺が好きなのは、真白だ。お前なんかじゃない」
女子が舌打ちをして逃げるのと、あたしがその場の砂を蹴るのは一緒だった。
「真白…っ?」
彩夏があたしの名前を呼ぶけど、あたしは振り返ることもせず前を向いて走り続けた。
(嫌、嫌、嫌だ!!)
『俺が好きなのは真白だ』
だって?
それを聞いて、どうしてあたしの心はドキドキしてるの?
思い通りに行かない心臓に、ホントにムカつきを覚える。
あたしは、先輩が好きじゃない。
あたしが好きなのは先輩じゃない。
そうでしょ?
なのに、なのに!!
「何で…胸が苦しいの?」
どうしてこんな気持ちになるの?
それは、
諒太を好きだと気づいた時と似ていて…。
一生忘れられないような時とかぶって…。
「何がしたいのか、わかんないよ」
自分がわからなくなる。
どうしたいのか、あたしの…本当の気持ちって何なのか……。
「わかんないよ……っ」
公園を出た近くの曲がり角でうずくまる。
盆踊りの曲の音量が、物凄く大きい。
携帯がなった。
彩夏からだったけど、あたしは出れなかった。
だって、涙腺まで壊れちゃったんだもん……。
「真白、ちゃん?」
ハッとして頭を上げた。
「将ちゃ……っ」
「どうしたの?」
優しく声をかけてきてくれて、あたしと同じようにしゃがむ。